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ノーグルメブログ

「古道具 中野商店」あたたかくて苦しい

こんにちは。

 

今月は読書感想文月間かもしれません。

 

古道具 中野商店 (新潮文庫)

古道具 中野商店 (新潮文庫)

 

 

川上弘美さん「古道具 中野商店」

 

心の揺さぶられ方が半端じゃないです。

読む人をどんどん惹きつけていく小説だと思います。

 

小さな商店の中で、みんながみんなのことを考え、想い合う。いいチームだと思います。

20代の男女、50代前後の姉弟、それぞれの恋と仕事。

古道具屋のゆっくりした時間と中野商店メンバーの個性を楽しむだけじゃなくて、けっこう深いです。

幸せな恋愛でも、順調な人生でもないかもしれません。

 

ただただ現実的で、苦しいのになぜかずっと温かい。

このバランスは、川上さんだから書けるのだと思います。

 

私は主人公のヒトミ目線で読んでいて、ずっと切なかったです。

ちょっと不器用なヒトミと、かなり不器用なタケオ。

 

ヒトミさんも、生きていくのとか、苦手すか。

 

タケオのこの言葉が、読み終わるまで、とういうか今も私の中に強く残っています。

 

30代になって、やっとこの意味がわかります。本当に不器用で下手な人はいるのかもしれません。性格とかではなく、もっと根本的な部分で、自分を変えたくても変えることはできないのだと思う。

 

私はどちらかと言えば、生きるのが得意なタイプより、苦手なタイプの人の方が好きかもしれません。

ただ、圧倒的なコンプレックスや闇にはやっぱり壁があって、ヒトミと一緒に苦しくなりました。

 

怒っている理由とか、どうして電話に出てくれないのか、いろいろ考えるけど、多分タケオは全然違うことを考えているだろうとヒトミは思う。

 

相手は全然違うことを考えていると、考えられている時点で、20代のヒトミを尊敬してしまう。

 

男の人はなぜ自分の辛いこととか、弱みを多くは見せてくれないんでしょうね。

黙っていることで逃してしまうこと、伝わらなくてすれ違ってしまうことが多いんじゃないでしょうか。

 

女の方も聞けないし、先回りして何か伝えると上から目線になってしまうし。

その先回りが的を射ているかもわからない。

全然違うかもしれないし、核心に触れてはいけない場合もある。

 

同情なのか、なんなのか。

この難しさも人間関係や恋愛の醍醐味なのかもしれません。

  

そして、生きるのが苦手な人も、わかってくれようとする人に出会えたら、世界はちょっと変わると思います。

 

もし興味のある方は、この小説を最後まで読んで、何とも言えない温かさに触れてみてほしいです。

苦しさがあるからこそ、すばらしさや成長が際立つのだと思います。

 

読んでいただき、ありがとうございました。